裁判員裁判報告会 共謀共同正犯?幇助犯? 西浦善彦

この度、私は、裁判員裁判担当の経験のある藤田ダニエル法律事務所の藤田充宏先生に誘っていただき、

平成23年2月23日から3月7日までの間、東京地裁立川支部にて、弁護人として裁判員裁判をしてきました。

この事件は、元暴走族グループのメンバーを含む共犯者13名が、相手方グループのリーダーの居場所を聞き出そうという目的で、相手方グループのメンバー1名を逮捕監禁し、その結果、死に至らしめたという逮捕監禁致死事件でした。

私達が弁護することとなった被告人は、逮捕監禁行為の目的も知らず、ほとんどの共犯者らと事前の面識がないまま、共犯者の1人である友人に誘われ現場に赴き、自動車の中に乗っていたところ、他の自動車に乗っていた共犯者が、被害者を逮捕監禁した、という程度の関与であり、共犯者13名中、一番関与の薄い者でした。

そのため、そもそも、自己の犯罪を行ったものとして共同正犯者といえるのか、それとも、単に他の者の犯罪を手助けしただけの幇助犯にすぎないのかという点が争点となりました。

(共謀)共同正犯とは、自ら犯罪を実行しないものの、共犯者とともに謀議に加わり、計画立案や指示など、犯罪結果実現のために重要な役割を果たした者をいいます。

一方、幇助犯とは、自ら犯罪を実行せず、しかも、犯罪実行者を助け、犯罪結果実現を容易にするような行為をした者をいいます。

被告人は、自ら安易に友人の誘いに応じ、結果として犯罪に関与したことを心から後悔し、反省していました。しかし、我々は、客観的に見て、この被告人の関与の度合いは、共謀共同正犯ではなく、幇助犯だと主張しました。

結果として、裁判官3名と裁判員6名の9名の判断者は、被告人に逮捕監禁致死の共謀共同正犯が成立すると判断しました。ただし、刑としては、関与の度合いが極めて低いとして、執行猶予付きの判決を下しました。

裁判官も、検察官も、我々弁護人も、それぞれが、①共謀共同正犯が何なのか。②幇助が何なのか。③その区別基準は何なのか。という点をどうやったらわかりやすく裁判員の方に説明できるのかについて、協議を重ねました。

実際、裁判員になった6名の方、と補充裁判員2名の方が、どう感じたか、感想を聞く機会はありませんでしたが、池本裁判長をはじめとした裁判体の訴訟指揮は、極めて公平であったと感じています。

本日5月17日(火)午後6時00分から、第ニ東京弁護士会裁判員実施推進センター主催で、この事件の、事件処理につき、冒頭陳述、弁論の実演を交えた報告会を行います。

興味をお持ちいただいた方は、是非お立ち寄りください。

                  記

第8回裁判員裁判報告会のご案内~正犯性が争われた事件~

                             裁判員裁判実施推進センター

今回の報告会は、逮捕監禁致死と覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の二つの事件を採り上げます。いずれも,共謀共同正犯ではなく幇助犯を主張し,結論的には否定されましたが,量刑上は顕著な成果を挙げた事件です(逮捕監禁致死は執行猶予,覚せい剤取締法違反は求刑の半分以下)。ご参加をお待ちしております。

◎日 時:5月17日(火)午後6時~8時

◎場 所:弁護士会館10階1003号室

◎報告者:藤田充宏弁護士(二弁)、西浦善彦弁護士(二弁)

                   和田恵弁護士(東弁)

◎コメンテーター:神山啓史弁護士

◎申込み:4月末にお届けしている会員発送「研修会のご案内」に付属の「申込書」,若しくは下記にて申込み下さい。

※継続研修/新規登録弁護士研修として2単位/2時間となります。

【お問合せ先】第二東京弁護士会